鶏犬けいけん)” の例文
鶏犬けいけんの声は平和のシムボルでありますけれど、鶏は時を作るものだが、犬は時間を知らせるものではありません。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬の目的には頓着なく、存外鷹揚おうような客と見たので、駕籠屋は勢いよく急がせる。そのうちに、前後でしきりに聞ゆる鶏犬けいけんの声。夜は白々しらじらと明け放れたものと見ゆる。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この一つ家の中には、弁信その人のほかには、絶えて人間の気配のするものをれていないと同じく、そのすすけた天井には鼠の走る音もあるのではなく、その外壁のあたりに、鶏犬けいけんの声だも起らない。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)