鯉汁こいこく)” の例文
いきづくりはお断わりだが、実は鯉汁こいこく大歓迎なんだ。しかし、魚屋か、何か、都合して、ほかの鯉を使ってもらうわけには行くまいか。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
温泉に浴して汗を流し、鯉汁こいこくのお代りをして飯八椀を平らぐ。翌朝まで何事も知らずに眠る。次の日は千曲川ちくまがわの船橋を渡り、妙高山みょうこうざん黒姫山くろひめやまの麓を迂回して越後国えちごのくに高田にづ。
椀がついて、蓋を取ると鯉汁こいこくである。ああ、昨日のだ。これはしかし、活きたのをりょうられると困ると思って、わざと註文はしなかったものである。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鯉汁こいこくを一口に食べますとね、魚のはらわたに針があって、それが、咽喉のどへささって、それで亡くなるのでございますから、今頃ちょうどそのお膳が出たぐらいでございますよ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)