鬼一法眼きいちほうげん)” の例文
将来は、鬼一法眼きいちほうげんの伝を汲み、京八流の真髄しんずいを参酌して、吉岡流の一派をなされた拳法先生のごとく、自分も至らぬ身ながら一心に励んで、宮本流をてたいのが望みでございます。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば鬼一法眼きいちほうげんから兵法の秘書を取り出したと説かんがために、義経は中途で一度、中仙道を通って奥州から京へ帰ってこなければならなかった。弁慶が家来になるのもその際の話になっている。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
狂言は「ひらがな盛衰記」の逆櫓さかろ、「鬼一法眼きいちほうげん」の菊畑、「為朝ためとも」の八丈島、「梅川忠兵衛」の封印切から新口にのくち村などで、子供芝居流行の気運に乗じたためか、この興行もまた相当の成績を収めた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
余はゆか囃子はやし連弾つれびき掛合かけあいの如き合方あいかたを最も好むものなり。『鬼一法眼きいちほうげん菊畑きくばたけの場にて奴虎蔵やっことらぞう奥庭おくにわに忍び入らんとして身がまへしつつ進み行くあたりのゆかの三絃を聴かば誰かチョボを無用なりとせん。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)