高根たかね)” の例文
彼は自分をあやしまずにはいられなかったが、けだし平中の思慕の情は、夫人が彼の及び難い高根たかねの花になったと云う事実に依って、挑発ちょうはつされたところもあろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
伯父の高根たかね晋齋しんさいは、片手に六連発銃を持ち襖の間から狙いを定め、カチリと弾金ひきがねを引く途端、ドーンと弾丸たまがはじき出る、キャー、ウーンと娘は気絶をした様子。
ここで根というのは勿論もちろん地下ではなく、たとえば日本の前代に大和島根やまとしまね、もしくは富士の高根たかねというネと同じく、またこの島で宗家そうけをモトドコロ或いはネドコロともいったように
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
行子は三階の閣室で、おなじ年ごろの高根たかねという侍女を相手に、のどかな顔で双六の骰子を振りながらいろいろと画策していた。こうまで取固とりかためたかこいのなかへひきこむにはどうすればいいのか。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
富士の高根たかねを目の下に見て八十三老白里
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)