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馨
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けい
粕谷の夫妻は彼女を慰めて、葛城が此等の動揺は
当に来る可き
醗酵で、少しも懸念す可きでないと
諭した。然しお
馨さんの渡米には、二念なく賛同した。
明治四十三年二月三日、粕谷草堂の一家が
午餐の卓について居ると、一通の電報が来た。お
馨さんの
兄者人からである。眼を通した主人は思わず
吁と叫んだ。
港外のモンゴリヤ号は已に
錨を抜かんとして、見送りに来た葛城の姉もお
馨さんもとくに去り、葛城独甲板の
欄に
倚って居た。時間が無いので
匆々に別を告げた。