飮食のみくひ)” の例文
新字:飲食
向うの廣間に置いた幾つもの衝立の蔭に飮食のみくひしてゐる、幾組もの客を見渡しつゝ、お文はさも快ささうに、のんびりとして言つた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
果實このみより、また青葉にかゝる飛沫みづけぶりよりいづる香氣かをり飮食のみくひの慾を我等のうちに燃やすなり 六七—六九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
斯樣こんな宿ぢや解らないサ。」とK君は笑つた。「料理屋へでも行つて飮食のみくひして見なけりや——僕はよく左樣さう思ふよ、其土地土地の色は彼樣あゝいふ場所へ行つて見ると、一番よく出てる。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「御馳走に引かれて行くのでなきや、向うへ行つても飮食のみくひは止すが宜いぜ」
其日は晝飯ひるを食はずだから、宿へ頼んで、夕飯を早くして貰つた。皆なおなかが空いて居た。一時は飮食のみくひするより外の考へが無かつた。嫌ひな船に搖られた故か、A君は何となく元氣が無かつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)