青麦あおむぎ)” の例文
親仁おやじはのそりと向直むきなおって、しわだらけの顔に一杯の日当り、桃の花に影がさしたその色に対して、打向うちむかうそのほうの屋根のいらかは、白昼青麦あおむぎあぶる空に高い。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夕方は、まんまるなあかい日が、まんじりともせず悠々ゆうゆうと西に落ちて行く。横雲よこぐもが一寸一刷毛ひとはけ日の真中を横になすって、画にして見せる。最早もうはらんだ青麦あおむぎが夕風にそよぐ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
正面に、青麦あおむぎに対した時、散策子のおもてはあたかも酔えるが如きものであった。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)