青額あおびたい)” の例文
王倫は、佩剣はいけんへ手をかけた。しかし抜けない。いやそれよりもはやく、豹子頭ひょうしとうのその青額あおびたいが、低くどんと、彼の心窩みずおちの辺へぶつかって来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして月代さかやき青額あおびたいには、当時、きびしい禁教の象徴としてみおそれられている十の傷があとになって残っていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱鞘しゅざやで、白絣しろがすりの着ながしだった。青額あおびたいに、講武所風の髷先まげさきが、散らばって、少し角ばったにがみのある顔へ、酒のいろを、ぱっと発している。三十前後の男である。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見る間に駈け寄ってきたのは春日新九郎、青額あおびたいに紫紐の切下げ髪は余り美貌過ぎて、不敵な郷士の度胆どぎもを奪うには足りないが、勇気は凜々りんりんとして、昔の新九郎とは別人のように
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)