露呈ろてい)” の例文
僧侶の秘事や、寺侍たちの悪風は、市中に露呈ろていしているもの以上である。ここもまた、決して、それらの腐敗寺院の例外ではない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたんに月は雲間を出でて、月光は水のように流れ、くぬぎ林はほのぼのと幹を露呈ろていしてわが眼底に像を結んだ。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大伴おおとも御行みゆき、粗末な狩猟かり装束しょうぞくで、左手より登場。中年男。荘重そうちょうな歩みと、悲痛ひつうな表情をとりつくろっているが、時として彼のまなざしは狡猾こうかつな輝きを露呈ろていする。………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
というのは、今春来の不平不満は今なお鬱勃うつぼつとしていて、対秀吉感情は少しもあらたまらず、上方筋の情報を耳にすれば、忽ち、岡崎、浜松にその反撥が露呈ろていして
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸いに、高麗も明も、元ほどな威を、彼もその時代は、持たなかったからいいが——それにせよ、室町幕府の腐敗ぶりがそのまま海外に露呈ろていしていたら何とも知れん。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
離反常なし、という戦乱下の人心は、いまや遺憾いかんなく、その浮動性を露呈ろていして
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
案外な不用意を露呈ろていして、知らぬまに、重大な波紋を作っていることが多い。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)