霧散むさん)” の例文
打ち揚げておかねば、せっかくな気運も、一時だけで、霧散むさんしてしまおう。……何といっても、みかど(後醍醐)のご遠島は、宮方の大きな沮喪そそうであったからな
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝家は身をもってのがれたが、勝家の羽翼うよくであった全軍は、完全に潰滅かいめつ霧散むさんし去った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嘆息たんそくは彼の癖であった。何事にまれ胸中を打ち割って他に語るとか、憂いを磊落らいらく霧散むさんしてしまうとかいうことのできない彼は、それを独り——ああという一語によってせめてもの自慰じいとしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)