雲母きら)” の例文
思ふにこれ当時の画工が鏡のおもてに人の顔の映りしさまを見せんとしたる新意匠なるべし。そはともあれ今日写楽の似顔絵を見るに雲母きらは人物背後の装飾として最も面白く感ぜらる。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
白地に雲母きらきりの紋のある襖が外の明りを一杯に反射しているので、室内に暗いくまが一つもなく、空気が隅々すみずみまで透きとおっていて、貞之助のくゆらす煙草の煙がくっきりと一つ所にを作っている。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
写楽が雲母きらを揉みこそげ、 芭蕉の像にけぶりしつ
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
これによつて窺へば写楽の似顔絵は細絵ほそえの全身画も多けれど無比の傑作とすべきはやはり世人知る所の雲母摺きらずりなるべし。当時歌麿の美人画にも肖像画の地色に銀色の雲母きらを敷きたるもの多し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)