隧道すいどう)” の例文
その後、毎年八千メートルから時には一万メートルに及ぶ隧道すいどうが、コンクリートで固めた上に水硬石灰の漆喰工事しっくいこうじを施して作られた。
鉄道の隧道すいどうが通っていて、折柄、通りかかった汽車に一度現代の煙を吐きかけられた以後は、全く時代とは絶縁された峠の旧道である。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大雨のためにジェノヴァとピサとの間の隧道すいどうが崩壊した、ということが旅客らに伝えられた。どの列車もみな数時間遅延していた。
人の智慧は切通しとなり隧道すいどうとなり、散々山の容を庭木扱いにした揚句あげく、汽車の如きに至っては山道を平地にしてしまった。
峠に関する二、三の考察 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人が辛うじて立って歩けるくらいな隧道すいどうが一本穿うがってあって、それがちょうどそのバスの停留場の所へ出るようになっている
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
年古としふりた杉の柱廊が続いた。冷たい山気がみて来た。魔女のまたがったほうきのように、自動車は私を高い空へ運んだ。いったいどこまでゆこうとするのだろう。峠の隧道すいどうを出るともう半島の南である。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
パンテオンの低下は、一世紀以前に、サント・ジュヌヴィエーヴ山の隧道すいどうの一部をそういうふうにしてふさいでしまった。
枝道に出会うたびごとに、彼はそのかどに一々さわってみた。その口が今いる隧道すいどうよりも狭い時には、そちらに曲がり込まないでまっすぐに進んでいった。