随喜ずゐき)” の例文
旧字:隨喜
若し彼等の「常談じやうだん」としたものを「真面目まじめ」と考へて見るとすれば、黄表紙きべうし洒落本しやれぼんもその中には幾多の問題を含んでゐる。僕等は彼等の作品に随喜ずゐきする人人にも賛成出来ない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
印刷局いんさつきよく貴婦人レデイに到るまで随喜ずゐき渇仰かつがうせしむる手際てぎは開闢以来かいびやくいらい大出来おほできなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
安月給取りの妻君、裏長屋うらながやのおかみさんが、此の世にありもしない様な、通俗小説の伯爵夫人の生活に胸ををどらし、随喜ずゐきして読んでゐるのを見ると、悲惨な気がする。をかしくもある。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
屋根船や船宿ふなやどを知つてゐる老人達は定めしこのモオタアボオトに苦々にがにがしい顔をすることであらう。僕は江戸趣味に随喜ずゐきする者ではない。従つて又モオタアボオトを無風流ぶふうりうと思ふ者ではない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これは水上滝太郎みなかみたきたらう君の「友はえらぶべし」の中の一節である。僕はこの一節を読んだ時に少しも掛値かけねなしに瞠目だうもくした。水上君の小説は必ずしも天下の女性の読者を随喜ずゐきせしめるのに足るものではない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)