長患ながわずら)” の例文
それはかく、このわし達夫婦の引続いての長患ながわずらいが、あの恐ろしい破局への不気味な前奏曲であった。わしの運命のけちのつき始めであった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「なあにな。俺もな婆様、ひでえ長患ながわずらいしてしまって、儲げだ銭どこでなぐ使ってな。」
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
叔父は真面目な他の会社などへ勤めて、間弛まだるっこい事務など執っていられなかった。子供に続いて、妻が長患ながわずらいのあげくに死んでから、家というものを、あまり考えなくなった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ほうしたら、売れで売れで、凍り豆腐は、あの爺様のでねえげ駄目だぢ評判で、随分儲げだのだげっとも……長患ながわずらいして、残した銭も、しっかり使ってしまって、またこうしてこれ……
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)