鏤骨るこつ)” の例文
近代の仏詩は高踏派の名篇において発展の極に達し、彫心鏤骨るこつの技巧実に燦爛さんらんの美をほしいままにす、今ここに一転機を生ぜずむばあらざるなり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
といったという、最期のさまを思いあわせてみても、それは必然に、大府だいふへ届けよという、かれが鏤骨るこつの隠密報告だな、ということは弦之丞にすぐうなずけた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四十五六というところが精々でしょうか、鏤骨るこつの労苦と研究に痛められて、五十より若くは見えません。
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
良沢の志は、そこでござる。われらは、この後にきたる者のためには、彫心鏤骨るこつの苦しみも、厭い申さぬ覚悟でござる。杉田氏も、お志をお捨てなされないで、お始めなされい。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
『門三味線』は全く油汗をしぼって苦辛くしんした真に彫心鏤骨るこつの名文章であった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)