鉄気かなけ)” の例文
然し、その重い網扉がけたたましい車金具の音と共に開かれ、鉄気かなけが鼻頭から遠ざかると同時に、密閉された熱気でムッと噎せ返るような臭気を、真近に感じた。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
南部なんぶが何と言っても、京都には敵いません。値段も倍から違います。鉄気かなけの出ないこと請合うけあいです」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ところでガータロと云う奴は鉄気かなけを嫌うもんですから、そう云う時には、何んでも構わない、鉄気のものを水の中へ投げさえすれば助かるんで、ふっとそのことを思い出して
紀伊国狐憑漆掻語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『どうか成りましょう。江戸でいけなければ上方、上方で人間になれなけれあ、中国、九州。——土と鉄気かなけのある土地なら、鍛冶小屋の一軒ぐらいは、どこかに建ちましょう』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ二十五六の薄いひげやした男がどぶんと飛び込んだ。すると、からだに付いていた石鹸シャボンあかと共に浮きあがる。鉄気かなけのある水をかして見た時のようにきらきらと光る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その一ツの池からは、いつも湯の烟がほうほうと立って、鉄気かなけで水が赤びている、池の畔には川楊が行列をして、その間から、梓川の本流が、漫々と油のような水を湛えて、ぬるぬる流れている
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)