釣魚ちょうぎょ)” の例文
わたくしは或日蔵書を整理しながら、露伴先生の『讕言らんげん』中に収められた釣魚ちょうぎょの紀行をよみ、また三島政行みしままさゆきの『葛西志』をひもといた。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
川添いの地にいたので、何時いつとなく釣魚ちょうぎょの趣味を合点がてんした。何時でも覚えたてというものは、それに心の惹かれることの強いものである。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
三個の連環湖であることがおもむきを添え、四面しめん蒼翠そうすいに囲まれ、諏訪神社の古びたほこら松林しょうりん中にあり、池には貸ボートや釣魚ちょうぎょの設備があって、更に一段と手を加えれば
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「ここに控え居る東馬共々、数日前に、絹川において、それがし釣魚ちょうぎょいたせし際、古船に乗って正体失い、流れ来たった女がござった。……助けて屋敷へ連れ参ったが、ただ今の歌の主でござる」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大正四、五年の頃南岳四谷の旧居を去つて北総市川の里にうつり寒暑昼夜のわかちなく釣魚ちょうぎょを事とせしが大正六年七月十三日白昼江戸川の水に溺れて死せり。人その故を知るものなし。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)