金目垣かなめがき)” の例文
叔父の家は広い植木屋の地内で、金目垣かなめがき一つ隔てて、じかにその道路へ接したような位置にある。垣根のわきには、細い乾いたみぞがある。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
仕切りの金目垣かなめがきは、いやが上にもよく茂り、野良犬の通路とも見えるかなりの穴が一つある外には、木戸一つない因業いんごうなものでした。
金目垣かなめがきにささやかな門、庭木が小暗くしげっている。南向きの六畳の部屋、経机を前にしとねにより、書見している一人の武士、ほかならぬ袴広太郎。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「最早お房は居ない」こう思って、若葉の延びた金目垣かなめがきの側に立った時は、母らしい涙が流れて来た。お雪は家の内へ入って、泣いた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
庭木がこんもり繁っていて、容易に奥が見えすかれず、まわりはグルリと金目垣かなめがきちんが一匹といいてえが猫と鸚鵡が住んでらあ。……とおれは思うのだ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
歩調をそろえた靴の音が起った。カアキイ色の服を着けた新兵はゾロゾロ窓の側を通った。金目垣かなめがき一つ隔てた外は直ぐ往来で、暗い土塵つちぼこりが家の内までも入って来た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
フーッとうなるとスペイン猫、ポンと金目垣かなめがきをおどり越えた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中には月あかりの中を馳出かけだして行くのもあった。三吉は姪を庇護かばうようにして、その側を盗むように通った。表の門から入って、金目垣かなめがきと窓との狭い間を庭の方へ抜けると、裏の女教師の家でも寝た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)