醸成じょうせい)” の例文
この、あやしい部下の心理を醸成じょうせいしたものは、万余の大軍はあっても、そこにげんたる統率がなかったという、ただ一事に尽きる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其処に面白からぬ夫婦関係が醸成じょうせいされつつあった事は、何人なんぴとも想像し得るじゃないか。事実、博士はひそかに妾宅しょうたくを構えて何とかいう芸妓げいしゃ上りの女を溺愛できあいしているんだ。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はその宣言の中に人々間の精神交渉(それを彼はやさしいなつかしさをもって望見している)を根柢的に打ちくずしたものは実にブルジョア文化を醸成じょうせいした資本主義の経済生活だと断言している。
想片 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
宿老宿老と結び、みだりに御遺族のお一方ひとかたようし、党を組み、遺臣を誘説ゆうぜいし、求めて世上の不安を醸成じょうせいしつつあるなど、そもそも、その理由の了解りょうかいに苦しむものである
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たぶんに醸成じょうせいされていた人心の腐敗土だったが、こんどは世直しの世と期待していた建武新政にも失望して、前途の滅失を感じだしたとなると、いまやそれは極端にまでなってきた。
他家に類のない“徳川家”という独自なものを醸成じょうせいして来た結果にほかならない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
比企掃部介ひきかもんのすけなどの党が、ようやく成人した頼朝を立てて、謀叛の気運を醸成じょうせいしているやに見うけられる、六波羅におかれても、ご油断はあるべからず——といったような長文の進言であったそうな
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)