都留つる)” の例文
これを都留つるなる郡名の起りであるとし、後になって嘉名の鶴の字が代用されたことは、あたかも桂川の桂の字が蔓に縁のある葛であったのに
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
旦那さまがお呼びだからお居間へ伺うように、そう云われたとき都留つるはすぐ「これは並の御用ではないな」と思った。
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この谷間の、この部分だけは白昼のように明るいけれども、周囲は黒闇々こくあんあんに近い山々。僅かに二日の月が都留つるの山のに姿を見せているばかりです。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
東日本でも甲州の都留つるの郡、下野しもつけ出流いずる山などがあって、元は全国にわたった用語のように思われる。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
東京付近では、多摩川の支流秋川も、甲州南都留つるの笹子川もそうだそうである。利根川では岩本から上流ならば、どこでも山女魚の釣れる所では、大抵はやが釣れるのである。
水と骨 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
先刻の都留つる五八氏が訪ねて来てくれた。夕食後、牧田氏、都留氏と卓を囲んで会談する。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
これによって見るに、毅堂の甲州に遊んだのは久留里藩に仕えている間のことである。毅堂が甲州都留つる郡花咲村の豪農井上武右衛門なる者の家に滞留していたというのもまたこの時であろう。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
山梨県庁からは石塚都留つる中学校長、加島医師、丸山警部補、斎木巡査の四人がお伴し、それに『東京朝日』の特派員大東氏、同じく『報知』の森山氏を合せても、十二人に過ぎないのであるが
農民の世話役をしている、都留つる五八氏の案内で一巡する。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)