邂逅いきあ)” の例文
二人の片輪者と癩人とが、往来の上で邂逅いきあった時、癩人の方で道を避けた。そんなにも二人の片輪者は、恐ろしく気味悪く見えたのであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「わざと求めて邂逅いきあってやろう。そうだ北条内記に。そうして彼奴きゃつの眼の前で、思うさま大声で笑ってやろう。ゲラゲラゲラと崩れるように」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、老樵夫は歩き出したが、ものの二間とは行かなかったろう、旅装いをした五人の武士が、茅野雄の上って来た同じ道から、上って来るのに邂逅いきあった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、今、こうやって邂逅いきあった時にも、早速には逞しいこの武士が、醍醐弦四郎であることは気がつかなかった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
曲輪を抜けほりを飛び越え、若い一人の侍が、森然しんと更けた町々を流星のように駈け抜けた時、折悪く道で邂逅いきあった人はどんなに驚いたか知れなかったであろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕らの地図を模写したかもしくは瑞典スエーデンまで出かけて行ってヘジン博士に邂逅いきあって手ずから地図を貰ったか
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その後麟太郎はもう一度だけ鼓の持ち主に邂逅いきあった。明治元年三月十三日のしかも日中のことである。この頃大江戸は釜で煮られる熱湯のように湧き立っていた。
開運の鼓 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ではその窩人と邂逅いきあって水狐族に対する敵対の手段を尋ねたとしたらどうだろう! 恐らく彼らは喜んで教えてくれるに違いない。八ヶ嶽に行って窩人と逢おう!
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたし達鷺組と同じように、特別大事な任務を持ち、木曽の御岳へ上られた筈、お仙さんの云うことに嘘がないなら、名古屋へ入り込んでいるらしい。是非邂逅いきあってみたいものだ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
燃えるようにも鋭い眼と水のようにも冷やかな眼とがガッシリ空間で邂逅いきあったのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
妖怪ではござらぬ、人間でござる。思いあたることがございます! 不思議な巫女を頭とした、奇怪な庭師の群でござる。かつてこの場でそれ等の者と、邂逅いきあったことがございます。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……せっかく死んであげた後で、冥土で宗さんに邂逅いきあって、コレ、馬鹿者、なぜ死んだ、などと叱られたら詰まらないねえ。……でも宗さんがいないのなら、生きていたって仕方がない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昨夜邂逅いきあった看護婦であった。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)