道後どうご)” の例文
「どうなるか、当って砕けるつもりじゃが、もし、都合よう行ったら、道後どうごの風呂に入って、遊んで来てええ、って、親父がいうた」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
私は道後どうごまで逃げて来たようなものです。道後まで逃げて来ても、まだ気が落ちつかず、父を促して東京まで逃げて来たようなものでした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
そしてこれは彼にとって却って幸いだった、靱負は城下から北東に離れた道後どうご村に住居をきめると、坐食していてはならぬと思って、すぐに収入の道を捜してみた。
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伊予の国に入りますと、県も愛媛えひめに変ります。この国は宇和島うわじまとか大洲おおずとか松山とか今治いまばりとか名のある古い町が少くありません。道後どうごの温泉の如きも広く知られた地名であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「それじゃアあたしも親類だけ廻って来よう。道後どうごが奇麗になったそうなナア。」
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
大正十四年五月二十二日 道後どうごに宿泊。松山三番町横丁の某クラブに於て。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
草津大尉の声のする方に、道後どうご少尉が、懐中電灯を照しつけてみると、なるほど、今までの赭茶あかちゃけた泥土層でいどそうは無くなって、濃い水色をした、硬そうな岩層がんそうが、冷え冷えと、前途ぜんとさえぎっていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
道後どうご湯の町で買いもとめた助広すけひろの小刀、故郷を飛びだすときにも、どこを放浪しても、常に、肌身はなさず持ち歩いたのである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
何とか親をゴマカスうまい手段はないかと、伊東の別荘へ行けと勧める母の言葉を渋って、無理に東京で考えこんでいたのですが、偶然にも、父が休暇を取って、道後どうごの温泉へ行くことになったのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
やっと、養子の交換条件で、蜜柑を売ったとき、道後どうごの湯町で、前から眼をつけていた、助広の小刀を手に入れることが出来た。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)