遒勁しゅうけい)” の例文
そして山水訣さんすいけつの著者のごときも、蕭照は李唐から出て李唐にもまさり、董源とうげん皺法しゅうほうならって董源よりも遒勁しゅうけいであるとさえ評している。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
著者の博識はよく豊富なる材料を精選し各方面に渡れる専門的研究をして細微を極めしめたり。しかしてその文章を見るにまた頗る遒勁しゅうけいなるをや。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
隆古には殊に傾倒していたと見えて、隆古の筆意は晩年の作にまで現れていた。いわゆる浅草絵の奔放遒勁しゅうけいなる筆力は椿年よりはむしろ隆古から得たのであろう。
そしていて、浮腫ふしゅのようにぶくぶくしていず、遒勁しゅうけいともうべき響だということである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
鎮西八郎に見立てて帰る者が多いのですよ……どうです、この筆力の遒勁しゅうけいなことは。容斎はえらいです。国芳の石枕も出色な出来ですが、こうして並べて見ると格段の違いがありますね
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かえってきびきびした遒勁しゅうけいの口語脈に変じたことを喜ぶ。
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
役者似顔絵を見るにその面貌めんぼう衣裳いしょうの線を描ける筆力は遒勁しゅうけいなり。その挙動と表情とは欧洲人の眼には聊か誇張に過ぐるのきらひあれどこは日本演劇の正確なる描写ならざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)