遊子ゆうし)” の例文
成島柳北なるしまりゅうほくが仮名まじりの文体をそのままに模倣したり剽窃ひょうせつしたりした間々あいだあいだに漢詩の七言しちごん絶句をさしはさみ、自叙体の主人公をば遊子ゆうしとか小史とか名付けて
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
椰子の実の流れ着くという浜辺は多かったはずであるが、是が島崎氏のいうような遊子ゆうしによって、取り上げられる場合が少なかったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その泣き声は吾ながら悲壮のおんを帯びて天涯てんがい遊子ゆうしをして断腸の思あらしむるに足ると信ずる。御三はてんとしてかえりみない。この女はつんぼなのかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
車中、知り人も多いだろうし、不行儀は、遊子ゆうしのなすところで、土地の紳士にすすめられない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)