躰力たいりょく)” の例文
傷の痛みはないが、躰力たいりょくが残りなく消耗したようで、自分の席まで這い戻ることは、まったく不可能だということがわかった。
躰力たいりょくでも腕力でも、そして弁舌においても、文華はとうてい女房に対抗することはできなかったからである。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一汁一菜の御家風もよいが、躰力たいりょくが衰えたときには、精のつく食事をとるのが当然であろう。現に自分も腹痛と痢病のあと、躯を養うために食物を変えている。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そんなぐあいなので、泰二郎はしだいに過労が重なり、四月にはいると躰力たいりょくの消耗がめだってきた。
月の松山 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
血の量はそれほど多くはなかったが、このまえのときがひどかったし、躰力たいりょくがまだ恢復かいふくしていなかったため、喀血したあと失神し、夜が明けるまで昏睡こんすい状態が続いた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
躰力たいりょくも気力も消耗しつくしたらしい。眼の前にいる柿崎六郎兵衛の姿もぼんやりとしか見えず、ただ六郎兵衛の木剣だけが、ぞっとするほど大きく、重おもしく、はっきりと見えた。
粘り強い根気と疲れを知らぬ躰力たいりょくにものを云わせて、一歩一歩と進んでいった。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
油絞りは苦しい重労働であるが、百姓生れの辛抱づよさと、ずばぬけた躰力たいりょくとで、彼は誰にも負けない存在となった。いまでは彼をばかにする者は一人もないし、むしろ恐れられているくらいだ。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)