蹰躇ちゅうちょ)” の例文
迷亭もここに至って少し蹰躇ちゅうちょていであったが、たちまち脱兎だっとの勢を以て、口を箸の方へ持って行ったなと思うもなく
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかして余はその折も今日もこの評語に団十郎を除きてはの数語を加ふることを蹰躇ちゅうちょせず。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
これはヒロインの蹰躇ちゅうちょの心理を表わすものであろう。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
此方こつちへ」と云つた。丸で理科大学の穴倉のなかと同じ挨拶である。庭から這入るべきのか、玄関から廻るべきのか、三四郎は少しく蹰躇ちゅうちょしてゐた。すると又
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「打ち明けて下さらなくってもいから、何故」と云い掛けて、一寸ちょっと蹰躇ちゅうちょしたが、思い切って、「何故棄ててしまったんです」と云うや否や、又手帛ハンケチを顔に当てて又泣いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、さうこゝろよく引き受ける気にもならなかつた。何しろ知らない女なんだから、頗る蹰躇ちゅうちょしたにはしたが、断然断わる勇気も出なかつたので、まあい加減な生返事なまへんじをして居た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが誰も来ない、いくら蹰躇ちゅうちょしていても誰も来ない。早く食わぬか食わぬかと催促されるような心持がする。吾輩は椀の中をのぞき込みながら、早く誰か来てくれればいいと念じた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)