路傍みちのべ)” の例文
黒衣こくえ棲居すみかを立出でしが、かれが言葉を虚誕いつわりなりとは、月にきらめく路傍みちのべの、露ほども暁得さとらねば、ただ嬉しさに堪えがたく
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
路傍みちのべの柳は折る人の心にまかせ、野路のぢの花は摘むぬし常ならず、數多き女房曹司の中に、いはばうきくさの浮世の風に任する一女子の身、今日は何れの汀に留まりて、明日あすは何處の岸に吹かれやせん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
苦しさに堪えかねて、暫時しばし路傍みちのべうずくまるほどに、夕風肌膚はだえを侵し、地気じき骨にとおりて、心地ここち死ぬべう覚えしかば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)