谺響こだま)” の例文
かれは栗鼠狩りすがりといふ道楽に引かれて来たので、かれの放つた鳥銃てつぽうの音を反射する谺響こだまは、また一たびこの無人境の寂しさを破りました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
われは二あし三あし進み入りぬ。されど谺響こだまにひゞく足音あのとおそろしければ、しづかに歩を運びたり。先の方には焚火する人あり。三人の形明に見ゆ。
それまで二王立におうだちに立って、巨人が小人島こびとじまの人間を見るように、純一を見ていた岡村画伯は、「晩に来給え」と、谺響こだまのように同じ事を言って、夫人の跡に続いた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「一つ」とスピイスブルク市民たる小さい、太つた爺いさん達が、谺響こだまのやうに答へた。「一つ」と爺いさんの懐中時計が云つた。「一つ」とお神さんの時計が云つた。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
すると出し抜けに笑声がして、あき座敷に谺響こだまを起していたのだ。
あれ、谺響こだまが返すかすかな吐息……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かれは口笛を吹いて見たり、名を呼んで見たりしても、口笛と犬の名とを呼び戻す谺響こだまは聞えて、犬の姿は見えませなんだ。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
大時計が、「正午だ」と云ふと、市民一同口を開けて、谺響こだまのやうに「正午だ」と答へる。要するに市民は麦酒樽漬のキヤベツが好なことは無論であるが、彼等の大時計に対する自慢は又格別である。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
ききなさい。すぐに谺響こだまが報の答をします。
そこの谷々に谺響こだましています。9885