谷干城たにたてき)” の例文
四号病舎のかどまで来ると、副官を伴って、大股おおまたにそこへ入ってきた良人とばったり会った。鎮台総司令官、谷干城たにたてき少将である。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高知藩の谷干城たにたてきのような正直な人はそのことを言って、飛鳥尽きて良弓収まるのたとえを引き、彼ら戦功の兵も少々厄介視やっかいしせらるる姿になって行ったと評した。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
谷干城たにたてき、三浦梧楼、鳥尾小弥太こやた等を中心とする反対論の火の手は日に日に高まっているし、大隈の支配下にある外務省の中でさえ若い外交官の小村寿太郎なぞは反対論を唱えているではないか。
風蕭々 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
振向くと、司令官の谷干城たにたてき少将が、参謀の児玉こだま源太郎少佐、樺山資紀かばやますけのり中佐など幕僚ばくりょう五、六名といっしょに、廊下に立っていた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この桐野流をよろこばない本省では、谷干城たにたてきに司令長官を命じ、利秋は干城と位置を換え陸軍裁判長となったことがある。その時の利秋の不平は絶頂に達して、干城に対し山県大輔やまがたたいふをののしった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)