譬話たとえばなし)” の例文
種播たねまきの譬話たとえばなしをせられた後にはゲラセネに退かれ(四の三五)、十二弟子が地方伝道から帰った時にはベッサイダに退かれ(六の四五)
その日であったか、また、別な日であったか、周さんは更にこんな即興の譬話たとえばなしでもって私を啓発してくれた事があった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いい換えれば、客間は台所や仕事場からそんなに遠ざかっているのである。食事さえも普通は食事の譬話たとえばなしにすぎない。
「文学者とはどういう者であるか? 譬話たとえばなしかなんかで、暗示的におっしゃって戴けませんか?」
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
一場の譬話たとえばなしに過ぎないけれど、そのく影は意外に深い。
翻訳遅疑の説 (新字新仮名) / 神西清(著)
「これはわが体、これはわが血」とおっしゃれば、わかる者にはわかる。実に美しい譬話たとえばなしと言おうか、実物をもって描いた絵であります。
わたしはそれを眺めやるごとに「雲雀ひばりと刈り入れびと」の寓話や「種蒔く人」の譬話たとえばなし、そのほかを思い出した。しかし今はかれらはすべて去ってしまった。
「一厘も残りなく償わずば、という言葉もあるし、或者あるものには五タラント、或者には二タラント、或者には一タラントなんて、ひどくややこしい譬話たとえばなしもあるし、キリストも勘定はなかなかこまかいんだ」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
貴君にはイエスの譬話たとえばなしは通じない。イエスはここで主戦論を唱えられたのではない。家庭の分裂を預言せられたのだ。
譬話たとえばなしによればわれわれはずっと昔に人間に変わったはずだのに。小びとのようにわれわれは鶴と戦う。
イエスの教訓は多く譬話たとえばなしの形で語られ、これらの譬話は自然界の事物の引用に満ちている。空を飛ぶ一羽の鳥、野に咲く一茎の花も、彼の高き教訓の材料となっている。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)