詠嘆えいたん)” の例文
事実の羅列られつのためにも書かなかったつもりである。私は大音楽家達に対する心持を、散文詩のように、少しばかりの陶酔と、詠嘆えいたんをさえ交えて書いた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
青年沢庵は、若くして多感な——そして宗教家らしい詠嘆えいたんを洩らしてその側に立った。お通が、せっせと花を刈っている仕事には手伝おうともしないのである。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またあの方が、幾何いくら自殺をすると書いておありになっても、それはあの方の詠嘆えいたんに過ぎませんわ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
小松は暫く姉の手もとを見まもっていたが、ふと詠嘆えいたんするような調子でこう云いだした。
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なんの詠嘆えいたんでもない、悲嘆でもない、そう痛切なる感慨では決してなかった。ふと——しかしなんらの虚飾きょしょくもない心の底から——ふっとのぼったつぶやきであった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、家康は、人々の余りな詠嘆えいたんは好まない容子ようすであった。家臣としても実はそんな余裕はなかった。果たしてこれから無事に三河まで帰り着けるか否かすら、みな疑問の中だった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繰り返すように信長はいったが、ふと、詠嘆えいたん口吻こうふんから切り捨てて
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)