観世捻かんぜより)” の例文
平次はふところから小さい紙片を出しました。半紙を八つに切って、又二つに畳んだ、観世捻かんぜよりのような代物しろもの、開くとその中には、かなりの達筆で
往時、劇場の作者部屋にあっては、始めて狂言作者の事務を見習わんとするものあれば、古参の作者は書抜の書き方を教ゆるに先だって、まず見習をして観世捻かんぜよりをよらしめた。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
意気地いきじも張も葉がくれのやみに、男を思うあわれさよ。鶴を折る手と、中指に、白金プラチナ白蛇はくだ輝く手と、合せた膝に、三筋五筋観世捻かんぜより、柳の糸に、もつれもつるる、鼓の緒にも染めてまし。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それから、あの観世捻かんぜよりは女結びになって居た筈さ。武家が命がけの悪戯をするのに観世捻を女結びにするなんて、そんな悠長なことをするものか」