蝋塗ろうぬ)” の例文
蝋塗ろうぬりに螺鈿らでんを散らした、見事なさやがそこに落散って、外に男持の煙草入が一つ、金唐革きんからかわかますに、そのころ圧倒的に流行はやった一閑張いっかんばりの筒。
夜だからこれもハッキリとは、その風貌はわからなかったが、袴を着けない着流し姿で、たしかに蝋塗ろうぬりと思われるが、長目の大小を帯びている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
みな御殿風か有職模様ゆうそくもようの品ばかりで手拭いかけからおまるのようなものにまで蝋塗ろうぬりに蒔絵まきえがしてあったと申します。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蝋塗ろうぬりの白い団扇うちわが乱れ出した。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と、そこにはこの脇差のものらしい、こればかりはピカピカする蝋塗ろうぬりのさやが一つ、無造作に入れてあったのです。
宗次郎は静かにって、形ばかりの戸棚から蝋塗ろうぬりのげた鞘を持って来て、平次の前に押しやりました。