蚊帳かちょう)” の例文
しかるにその年の夏のはじめ、一匹のかわずえんから座敷へ這上って、右お部屋様の寝間の蚊帳かちょうの上にヒラリと飛び上ったので、取あえず侍女こしもと共を呼んでその蛙を取捨てさせた所が
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……主君とのの御気象が、大公儀へは余程、大袈裟に聞こえていると見えてのう。この程、大阪乞食の傀儡師くぐつまわしや江戸のヨカヨカ飴屋、越後方言より蚊帳かちょう売りなぞに変化へんげして、大公儀の隠密が入込みおる。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つり初に寝て見る昼の蚊帳かちょうかな 惟斗
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
そのあたり片づけて吊る蚊帳かちょうかな
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)