薙倒なぎたお)” の例文
が、やがて勇気を振い起すと、胸に組んでいた腕を解いて、今にも彼等を片っ端から薙倒なぎたおしそうな擬勢ぎせいを示しながら、いかずちのように怒鳴りつけた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこに用意されていた数々の脆弱ぜいじゃくな人工物を薙倒なぎたおした上で更に京都の附近を見舞って暴れ廻りながら琵琶湖上に出た。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
五日市まではなにごともないが、汽車が己斐こい駅に入る頃から、窓の外にもう戦禍の跡が少しずつ展望される。山の傾斜に松の木がゴロゴロと薙倒なぎたおされているのも、あの時の震駭しんがいを物語っているようだ。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
「こんな大風は、もの心ついてから覚えがないわ」けろりと晴れた翌る日の青い空を仰ぎながら、町の人々は、倒壊した人家だの、流された橋の跡だの、巨木の薙倒なぎたおされた並木などを見て歩いていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)