薔薇ローズ)” の例文
その玉は所謂紅玉ルビー色で、硝子で薔薇ローズカットが施こされていて、直径五分ばかりのものだ。紅玉色の硝子は、濃い黒い束ね髪の上にあった。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
クリヴォフ夫人は、それまで胸飾りのテュードル薔薇ローズ(六弁の薔薇)をいじっていた手を卓上に合わせて、法水に挑み掛るような凝視を送りはじめた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
薔薇ローズと呼ばれる年とつたその女中は、今私のゐるここの一家の人人と共に、永い年月を、長崎から神戸を経て、こんな風に東京の郊外で住まふやうになるまで、彼女の運命と時間を
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
マテュラン・レニエ(訳者注 十七世紀初めの風刺詩人)の頃には、この居酒屋はポ・トー・ローズ(薔薇の鉢)と号していて、判じ物がはやる頃だったから、薔薇ローズ色に塗ったポトーを看板にしていた。
その時、由子は、紅玉ルビー色の、硝子の、薔薇ローズカットの施こされたかんざしをお千代ちゃんのたっぷりした束ね髪の横に見たのであった。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
猶太人ジュウがよく、その形をカフスボタン襟布止めネクタイ・ピンに用いているけれども、そのダビデの楯(〓)の六稜形ひしがたが、クリヴォフの胸飾では、テュードル薔薇ローズに六弁の形となって現われているのだ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)