蓮見はすみ)” の例文
連れて不忍しのばず蓮見はすみから、入谷いりやの朝顔などというみぎりは、一杯のんだ片頬かたほおの日影に、揃って扇子おうぎをかざしたのである。せずともいい真似をして。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母親に手を引かれて行く子供をると、別にそれが綺麗な子でなくても、ぽちや/\肥つてさへゐれば、蓮見はすみに何とか話しかけて振顧ふりかへるのであつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
はす池があります。あれを前にした所は、ちょっと、不忍池のいろはか蓮見はすみ茶屋といったあんばいですぜ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早朝上野の不忍しのばずの池の蓮見はすみ歩行あるいて、草の露のいと繁きに片褄かたづまを取り上げた白脛しらはぎ背後うしろから見て、既に成女の肉附であるのに一驚を喫した書生がある、その時分から今も相変らず、美しい
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人の姿は、まもなく、不忍しのばずいけを見晴らした蓮見はすみ茶屋に上がっていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)