蒼海あおうみ)” の例文
艇長フォン・エッセン男の死体が消失した、しかも蒼海あおうみの底で、密閉した装甲の中で——この千古の疑惑は、再び新しい魅力を具えて一同のうえにひろがった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
少年ははらばいながら岬のはじへ出て下を覗き込んだ。少年のすぐ眼の下に底の知れない蒼海あおうみ真只中まっただなかから、空中につっ立っている一つの大きな大きな巌がある。
砂の上に唯一人やがて星一つない下に、果のない蒼海あおうみの浪に、あわれ果敢はかない、弱い、力のない、身体単個ひとつもてあそばれて、刎返はねかえされて居るのだ、と心着こころづいて悚然ぞっとした。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし玄徳が蜀に入ったら、ふちの龍が雲を、江岸のうお蒼海あおうみへ出たようなものである。ふたたび彼を一僻地へ屈伏せしめることはもうできない。魏にとって重大な強国が新たに出現することになろう。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)