葡萄蔓えびかづら)” の例文
あの葡萄蔓えびかづらにも紛はうず髪をさつさつと空に吹き乱いて、寄せては返す荒波に乳のあたりまで洗はせながら、太杖も折れよとつき固めて、必死に目ざす岸へと急いだ。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
湖のほとりに降りゆきて、葡萄蔓えびかづら纏へる「プラタノ」の古樹の、長き枝を水の面にさしおろしたる蔭にやすらひたる時、我等は纔に涼しさを迎へて、編みものに心籠むることを得つ。
葡萄蔓えびかづらかとも見ゆる髪の中には、いたいけな四十雀しじふからが何羽とも知れず巣食うて居つた。まいて手足はさながら深山みやまの松檜にまがうて、足音は七つの谷々にもこだまするばかりでおぢやる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)