葉摺はずれ)” の例文
椰子の葉摺はずれの音と環礁の外にうねる太平洋のなみの響との間に十代も住みつかない限り、到底彼等の気持は分りそうもない気が私にはするからである。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
山査子さんざしの枝が揺れて、ざわざわと葉摺はずれの音、それが宛然さながらひそめきたって物を云っているよう。
甘蔗の葉摺はずれの外、何も聞えなかった。私は自分の短い影を見ながら歩いていた。かなり長いこと、歩いた。ふと、妙なことが起った。私が、私に聞いたのだ。俺は誰だと。名前なんか符号に過ぎない。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)