苛酷きび)” の例文
その弁護士は滝の名も聞いたことがないと答えたので、老婦人は主人や岸本を前に置いて平素にない苛酷きびしい調子を出して言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
母にれ抜いた自分は、常から父をはばかっていた。けれども、本当の底を割って見ると、柔和やさしい母の方が、苛酷きびしい父よりはかえってこわかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
老婦人の手紙の中には可成かなり苛酷きびしいことが書いてあった。しかし知らない土地の人でそれだけ真実ほんとうのことを岸本のところへ書いてよこしてくれる人すら、めったに無かった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)