艫綱ともづな)” の例文
重い荷物を白鮫号に積み込んだ私達は、この吹き溜りには風がないので、岸伝いに白鮫号の艫綱ともづなを引っ張って、風のある入江の口までやって来た。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
栄三郎がプッツリと艫綱ともづなを切って放すと、岸にののしる左膳らの声をあとに、満々たる潮に乗って舟は中流をさした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おいおい、その綱を切つちやいかん。死なばもろとも、夫婦は二世、切つても切れねええにし艫綱ともづな、あ、いけねえ、切つちやつた。助けてくれ! おれは泳ぎが出來ねえのだ。白状する。
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
海産物会社の印袢天しるしばんてんを着たり、犬の皮か何かを裏につけた外套がいとうを深々と羽織ったりした男たちが、右往左往に走りまわるそのあたりを目がけて、君の兄上が手慣れたさばきでさっと艫綱ともづなを投げると
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
下男の早川は、ヨットの艫綱ともづなを岩の間の杭に縛りつけたり、船小屋からシートを取り出してヨットの船体ハルへ打掛けたりしていたので、私達よりもずっと遅れてしまった。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
おいおい、その綱を切つちやいかん。死なばもろとも、夫婦は二世、切つても切れねええにし艫綱ともづな、あ、いけねえ、切つちやつた。助けてくれ! おれは泳ぎが出来ねえのだ。白状する。
お伽草紙 (新字旧仮名) / 太宰治(著)