舵手かこ)” の例文
雲霧か何かが風のぐあいで吹き飛ばされて来たものだろうと、舵手かこの一人がそれを見て思った。そのうちにその雲霧のようなものの影は、ふわふわと舵柄の傍へ降りて来た。
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
星霜せいそう移り人は去り、かじとる舵手かこはかわるとも
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
艫の舵柄の傍では、年老った船頭が一杯機嫌で胡座あぐらをかき、大きな煙管キセルで煙草をみながら舵柄を見て、二人のわか舵手かこに冗談口を利いていた。煙草の火の光が暗い中に螢火のように光っていた。
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人の舵手かこは舵柄にすがったなりで起きあがれなかった。
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)