自烈じれっ)” の例文
私はさかさまに頁をはぐりながら、私に必要な知識を容易に与えてくれないこの長い手紙を自烈じれったそうに畳んだ。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ。あたし真剣に言ってんのよ。自烈じれったい。本当にあの人、気味が悪いのよ」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
青めりんすは引撲ひっぱたかないし、じれったくって、自烈じれったくってたまらない処へ、また余り姿容すがたかたちが天人になっておいでだから、これなり、ふッとどこかへ行ってしまいはしないだろうかと、夢中で血迷って
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄さんの調子にも兄さんの眉間みけんにも自烈じれったそうなものが顫動せんどうしていました。兄さんは突然足下あしもとにある小石を取って二三間波打際なみうちぎわの方にけ出しました。そうしてそれをはるかの海の中へ投げ込みました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
読者はさぞかし自烈じれったいであろう。私もうんざりしてしまった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分は自烈じれったい部に属する人間の一人として遠くから彼を眺めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
盤に向うや否や自烈じれったくなったのです。しまいには盤面に散点する黒と白が、自分の頭を悩ますために、わざと続いたり離れたり、切れたり合ったりして見せる、怪物のように思われたのだそうです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)