腕力わんりょく)” の例文
不善ある時はすなわち忠をもってこれを化し、侵暴しんぼうある時はすなわち仁をもってこれを固うした。腕力わんりょくの必要を見ぬゆえんである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この前にも述べたごとく野蛮やばんの社会においては腕力わんりょくある者が最強者で、最大勝利者で、人も尊敬し自己もまた得意であった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
兼吉は、腕力わんりょくでは花前によりつけないから、五郎に加勢かせいたのんだのだ。事実じじつは兼吉が牛をたたいたのかもしれないが、ふたりのいいじょうはそうであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
俺と山嵐はこれでわかれた。赤シャツがはたたして山嵐の推察通りをやったのなら、実にひどい奴だ。到底とうてい智慧比べで勝てる奴ではない。どうしても腕力わんりょくでなくっちゃ駄目だめだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勘太郎から見れば馬鹿ばかとしか思われない男が、ただ腕力わんりょくがあるばかりに勘太郎をいいように引きまわしていた。勘太郎はそれをはらの中でずいぶんくやしがりながらも、どうすることも出来なかった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「しかしかれは腕力わんりょくに……」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もっとも普通に女子は男子に劣るという言葉のうちには、腕力わんりょくの差違を含めることはいうまでもないが、思慮しりょにおいて男子の女子に優越ゆうえつなることを述べたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もちろんこれは腕力わんりょくの戦いでなく、経済的の戦いである。この戦いはすでに開始せられ、工場において、学校において、商店において、事務所において、女性は一部男性に代って仕事しつつある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)