むく)” の例文
雑煮の鍋を仕かけてゐる彼女の顔が、不断でも善くあるやうに、その時も滞んだ色に少しむくんでゐた。でも、融は気にもかけなかつた。
折鞄 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
甥に脚気の出たとき、笹村はお銀にいいつけて、小豆あずきなどを煮させ、医者の薬も飲ませたが、脚がだんだんむくむばかりであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
父親は何もすることなしに、毎日毎日こうしてだらけたような生活に浸っていた。皮膚に斑点しみの出た大きい顔が、むくんでいるようにも思えた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
暑い日は、半病人のような体を、風通しのよい台所口へい出して来て、はぎむくんだ重い足を、冷たい板敷きの上へ投げ出さずにはいなかった。しもの方も始終苦しそうであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)