胸膈きょうかく)” の例文
胸膈きょうかくを前へ出して、右のひじうしろへ張って、左り手を真直にして、ううんと欠伸のびをするついでに、弓をく真似をして見せる。女はホホホと笑う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米友も久しく見なかった広い原と、高い山の景色に触れると、胸膈きょうかくがすっと開くようにいい心持になりました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ですから肺が自然と圧迫されるのか突き出すのか分りませんが、非常に胸膈きょうかくが苦しくなって来ましてどうもして見ようがなくなった。で、まあ大病というような形状を現わして来た。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
吾人もし硬き疎なるじょく上にね、もしくは狭窘きょうきんなる位置にしたるときは、骨を傷つき、もしくは楚撻そたつに遭うと夢み、消化せざる食餌しょくじをなすときは、肥大なる黒熊来たり、わが胸膈きょうかくに当たりて
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
鼓動が胸膈きょうかくをつきやぶりそうに思えた。
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
指は延びないから拳骨げんこつ胸膈きょうかくあたりを摩擦して居ると、手に暖まりがついて大分指が動くように感じましたから、指を延ばして全体に対し摩擦を始めたがなかなか暖まりも着かない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)