うな)” の例文
眠元朗は、女をながめたが、女もその言葉にはうなずくような面持ちで、しずかに娘の方を向いた。——娘は黙っていた。そしてやっと口をひらくと言った。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
娘は前掛のはしをいじくりながら低声でうなずいたが、そこへ戻ってくると、くるッと向うむきに起ってしまった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
「ではどうか、そう願います」と云って自分が立ちかけた時、兄は「ああ」とうなずいて見せたが、自分が敷居をまた拍子ひょうしに「おい二郎」とまた呼び戻した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、マダム・ヴァンクールは何もいわずにうなずいてみせた。
ふみたば (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
千久馬は、それに応へる代りに、大きくうなづいてみせた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
お重は明らかにあによめを嫌っていた。これは学究的に孤独な兄に同情が強いためと誰にもうなずかれた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私がうなずくと、安心したようにほっと溜息をして
自責 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
細君はかすかに眼を開けて、枕の上で軽くうなずいた。健三はそのまま外へ出た。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)