老婆ばゞ)” の例文
あわたゞしき足音の廊下に高く成りて、お蘭さま御書見でござりまするか、濟みませぬがおくすりすこしと障子の外より言ふは老婆ばゞの聲なり
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『おわかりになりしや、其時こそは此の老婆ばゞにも、秋にはなき梶の葉なれば、渡しのしろは忘れ給ふな、世にも憎きほど羨ましき二郎ぬしよ』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あゝ好いところで御眼にかゝりましたが何所どちらへか御出掛けでござりまするか、と忙し気に老婆ばゞが問ふに源太軽く会釈して、まあ能いは、遠慮せずと此方へ這入りやれ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何事も此の老婆ばゞに任せ給へ、又しても心元こゝろもとなげに見え給ふことの恨めしや、今こそ枯技かれえだに雪のみ積れども、鶯鳴かせし昔もありし老婆、よろづ拔目ぬけめのあるべきや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
生みの子の愛に迷ひ入りたる頑凶かたくな老婆ばゞに責められて朝夕を経る胸の中、父上御坐おはさば母在らばと、親を慕ひて血を絞る涙に暮るゝ時もあるてい、親の心の迷はずてやは
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)