ひれ)” の例文
魚のひれがどうの、つばめの巣がどうのと云っていた彼は、番頭の手前もあるし、一ぱい飲んで、「佳いにおいだ」と云っていたが、気もちがわるくてしかたがなかった。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜が明けてから見ると舟の中に魚のひれが落ちていた。さしわたしが四、五尺ばかりもあった。そこでこれは宵に切ったひじであったということを悟ったのであった。
汪士秀 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
水におるもろもろの物の中是うちかくのごとき者を汝らくらうべし即ち凡てひれうろこのある者は皆汝ら之をくらうべし。凡て翅と鱗のあらざる者は汝らこれをくらうべからず是は汝らにはけがれたる者なり。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)